脳梗塞

【脳梗塞】要注意健康診断項目とその他の検査法

佳奈深澤

脳梗塞は突然発症することが多く、命に関わる重大な病気です。また、発症後には言語障害や半身不随などの後遺症が残ることがあります。しかし、脳梗塞には明確なリスク要因が存在するため、健康診断を通じて早期にリスクを把握できます。

脳梗塞に関連する健康診断項目

脳梗塞は、血管の詰まりや血流の低下によって、脳に酸素が届かなくなる病気です。そのため、血管や血液の状態を調べる以下の検査項目が脳梗塞リスクの把握において非常に重要です。1

血圧測定

高血圧は、脳梗塞の主要なリスク要因の一つです。血圧が高い状態が続くと血管に負担がかかり、壁が厚く硬くなる「動脈硬化」を引き起こします。動脈硬化が進行すると、脳の血管が詰まりやすくなり、脳梗塞のリスクが高まります。2

健康診断では、収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)を測定します。正常範囲を超える高血圧が続く場合は、血圧の適切な管理が必要です。

血糖値(空腹時血糖、HbA1c)

血糖値の管理も脳梗塞予防に欠かせません。高血糖状態は血管壁を傷つけ、動脈硬化を促進します。3

健康診断で測定される空腹時血糖やHbA1cの値から、血糖コントロールの状況を確認できます。糖尿病やその予備軍であると診断された場合、生活習慣の見直しや治療の検討が必要です。糖尿病が進行すると、脳への血流を保つ細い血管も損傷しやすくなり、脳梗塞のリスクがさらに高まります。

脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド)

血中のコレステロールや中性脂肪の値も脳梗塞リスクに影響を与えます。4 LDLコレステロール値が高いHDLコレステロール値が低い、中性脂肪(トリグリセリド)値が高い場合は、動脈硬化が進行しやすくなり、血管が詰まりやすくなります。

心電図検査

心房細動などの不整脈は、脳梗塞の原因の一つです。不整脈がある場合、心臓内で血栓ができやすくなり、これが脳の血管を詰まらせることがあります。健康診断で行う心電図検査により不整脈の有無を確認でき、心房細動が疑われる症状が見つかった場合は、精密検査の受診が必要です。

心臓からの血栓が原因で起こる脳梗塞を心原性脳梗塞と呼びます。梗塞範囲が広く重症化しやすい傾向があるため、早期発見と治療が重要です。

BMI(肥満度指数)

BMI(Body Mass Index)は、体重と身長から計算される肥満度の指標です。肥満は、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病のリスクを高め、それに伴い脳梗塞のリスクも増加します。5

BMIが基準値を超える場合は、食生活や運動習慣の見直しが推奨されます。BMIは簡単に算出できるため、健康診断以外でも定期的に確認しましょう。

各健康診断項目の正常値と異常値

健康診断で得られる数値は、脳梗塞のリスクを把握するために重要な手がかりです。脳梗塞のリスクに関わる主な検査項目の「正常値」と「異常値」を解説します。健康診断結果の見方を理解し、早期の予防対策に役立てましょう。

血圧

収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上になると高血圧と診断され、脳梗塞のリスクが上がります。高血圧が続くと血管に負担がかかり、脳の血管が傷つきやすくなります。

項目正常値異常値(高血圧)
収縮期血圧(mmHg)120未満140以上
拡張期血圧(mmHg)80未満90以上

参照元:厚生労働省e-ヘルスネット

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血糖値(空腹時血糖、HbA1c)

血糖値やHbA1cが高い場合、糖尿病またはその予備軍の可能性があります。糖尿病は脳梗塞を含むさまざまな病気のリスクを高めます。

分類正常値異常値(糖尿病疑い)
空腹時血糖値70-99 mg/dL126 mg/dL以上
HbA1c4.6〜6.0%6.5%以上

参照元:厚生労働省e-ヘルスネット

血糖検査は、採血にて行います。特定健診では、絶食10時間以上の空腹時血糖値を判定するのが原則です。

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脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド)

LDLコレステロールやトリグリセリドが高く、HDLコレステロールが低い場合は、動脈硬化が進行するため、脳梗塞のリスクが高まることがあります。また、Non-HDLコレステロールは、上昇に伴い虚血性心疾患の発症リスクが上がるため、脳梗塞の発症リスクも上昇します。

項目正常値異常値(要注意)
LDLコレステロール(悪玉)120 mg/dL未満140 mg/dL以上(リスク増加)
HDLコレステロール(善玉)40 mg/dL以上40 mg/dL未満(保護効果低下)
中性脂肪(トリグリセリド)150 mg/dL未満空腹時150 mg/dL以上
Non-HDLコレステロール150 mg/dL未満170 mg/dL以上(心疾患リスク増加)

参照元:厚生労働省e-ヘルスネット

空腹時中性脂肪または随時中性脂肪が 400mg/dl 以上、もしくは食後採血の場合は、LDL コレステロールに代えて Non-HDL コレステロール(総コレステロールから HDL コレステロールを除いたもの)で評価が可能です。

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心電図検査

正常異常
安定した心拍リズム(特に異常なし)心房細動、不整脈など

心房細動や不整脈があると心臓内で血栓ができやすくなり、それが脳血管を詰まらせることで脳梗塞を引き起こす可能性があります。健康診断の心電図検査で不整脈が疑われた場合、精密検査が推奨されます。

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BMI(肥満度指数)

BMI(体重[kg] ÷ 身長[m]²)は、肥満や痩せすぎを判断する指標です。体格を表す指標として国際的に用いられています。適切な体重を維持することは、血管や脳の健康を守るために重要です。

正常値異常値(肥満の目安)
18.5〜24.925以上

参照元:厚生労働省e-ヘルスネット

肥満は高血圧、糖尿病、脂質異常症のリスクを高める要因です。BMIは簡単に算出できるため、健康診断だけでなく日常的に確認することが重要です。

BMIについてもっと詳しく

その他の検査

通常の健康診断に加え、以下の追加検査を活用することで脳梗塞リスクをより正確に把握できます。

  • 頚動脈エコー
  • 心エコー
  • MRI/MRA検査
  • ホルター心電図

この検査でわかること

頸動脈エコー

頸動脈エコーは、首にある動脈の状態を確認する検査です。動脈硬化の進行状況を把握し、脳の血管にもリスクがあるかを推測できます。

調べられること
血管壁の厚み・血流の状態・コレステロールの塊(プラーク)の有無

特徴
痛みがなく短時間で行える安全な検査

心エコー(心臓超音波検査)

心エコーは、心臓の形や動きを調べ、血栓の有無や心房細動の影響を確認します。

調べられること
心臓の壁の厚さ・弁の動き・血流状態

特徴
心臓の異常を早期に発見し脳梗塞リスクを評価

MRI/MRA検査

MRI(磁気共鳴画像)とMRA(磁気共鳴血管撮影)は、脳や血管の状態を詳しく確認する検査です。

調べられること
脳の血管の詰まりや狭窄の有無

特徴
放射線を使わない安全な検査で脳の健康状態を可視化

ホルター心電図

ホルター心電図は、小型の装置を24時間装着し、心臓の動きを記録する検査です。

調べられること
日常生活中の心房細動や不整脈

特徴
短時間の検査では見つからないリズム異常を確認可能

この検査はどこで受ける?

脳梗塞リスクを詳しく把握するための追加検査は、通常の健康診断には含まれていないため、希望して受ける必要があります。以下に、追加検査を受けるまでの具体的な流れと手順を説明します。

かかりつけ医や専門医に相談する

健康診断で異常が見つかった場合や、健康状態に不安を感じたときは、かかりつけ医や内科の専門医に相談しましょう。医師に脳梗塞リスクが気になることを伝えることで、必要な追加検査を提案してもらえます。

【相談時に伝えるべきポイント】
  • 健康診断で異常値が見つかった項目とその数値(血圧、血糖値、脂質検査など)
  • 既往症や現在の体調(高血圧や糖尿病の治療歴など)
  • 脳梗塞の家族歴

紹介状が必要な検査もあるため、医師の指導を受けることでスムーズに受診できます。

専門クリニックや病院での追加検査

頸動脈エコーや心エコーなどの専門的な検査は、総合病院や検査専門クリニックで受けることができます。MRIやMRA検査は規模の大きな病院で実施されることが多いです。

【受診先の探し方】
  • 紹介状を利用して専門医療機関に予約する
  • 「頸動脈エコー+地域名」「脳ドック+地域名」などを検索する
  • 自治体情報の活用や、地域の医療機関リストを確認し設備の整った施設を探す

追加検査を受ける施設では、必要な検査内容や流れについて事前に確認するとスムーズです。

健診施設のオプション検査を活用する

最近では、健康診断のオプションメニューとして脳梗塞リスクに関する検査を提供する施設も増えています。会社の健康診断でもオプションを選択できることもあるため、チェックしておくとよいでしょう。

【注意点】
  • 検査費用は自己負担になる場合が多いため事前に料金を確認しましょう
  • オプション検査の結果次第で、さらに精密な検査が必要になることがあります

脳ドックを受ける

脳ドックは、脳の健康状態を総合的にチェックするための検査プランです。頭部MRIやMRAがセットになっています。脳梗塞リスクだけでなく、脳腫瘍や脳出血などの早期発見にも役立ちます。

費用は施設によって異なりますが一般的には数万円程度です。健診施設や病院のプランを比較し、自分のニーズに合った内容を選びましょう。

【脳ドックのメリット】
  • 動脈硬化の進行状況や血管の詰まりを確認でき、総合的な評価が可能
  • MRI検査は放射線を使用しないため体に優しい安全な検査
  • 通常の健康診断では見つからない異常の検出や病変の早期発見が可能

参考文献

*1 厚生労働省e-ヘルスネット「脳血管障害・脳卒中」 ↩︎
*2 厚生労働省e-ヘルスネット「高血圧」 ↩︎
*3 厚生労働省e-ヘルスネット「糖尿病」 ↩︎
*4 厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症」 ↩︎
*5 厚生労働省e-ヘルスネット「BMI」 ↩︎

日本肥満学会「あなたの肥満、治療が必要な「肥満症」かも!?」
日本人間ドック学会「検査表の見方」

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