疾患

【腎症】要注意健康診断項目とその他の検査方法

明木戸

腎症に関連する健康診断の項目

腎症とは、腎臓がなんらかのダメージを受けて機能が低下している状態のことを指します。糖尿病による腎症を「糖尿病(性)腎症」と呼び、慢性的な腎症が続いている状態を「慢性腎臓病(CKD)」と呼ぶこともあります。

腎臓は体の中の血液をコントロールしている臓器で、主になはたらきは以下の3つです。

  • 体の水分量の調節
  • 老廃物を排泄
  • 血圧の調整

腎症は血圧が上がる原因にもなります。また、腎症が続くと最終的には透析や腎臓移植が必要になるため、早期発見と早期対策が重要です。

ここでは、健康診断で実施される検査のうち腎症に関係の深いものについて解説します。

1. 尿蛋白

尿蛋白は、尿の中に含まれるタンパク質の量を測定したものです。腎臓の機能が低下していると、腎臓で体内に再吸収されるはずのタンパク質が尿から排出されます。

尿蛋白の検査は、試験紙に尿を付けるだけで結果が出ます。健康診断の尿検査で尿蛋白の数値を確認します。検査結果は(-)(+)といった記号で書かれることが多いです。

尿蛋白の正常値と異常値は以下の通りです。

基準値要注意異常
陰性(-)
15mg/dl以下
(+)(±)
15~30mg/dl
(2+以上)
30mg/dl以上
出典:厚生労働省「たんぱく尿」

ストレスや睡眠不足、疲労などが原因で一時的に尿蛋白の数値が高くなることもあります。慢性腎臓病(CKD)などは3ヵ月以上腎臓の機能が低下している状態のことを指すので、異常値が出てしまった場合は数カ月後に再度尿蛋白検査を受けるのがおすすめです。

尿蛋白についてもっと詳しく

2. 血液検査

糖尿病性腎症や慢性腎臓病(CKD)は、血糖値が高いことで引き起こされます。尿蛋白の結果とHbA1c(NGSP)および血糖値の数値結果を元に、糖尿病性腎症や慢性腎臓病(CKD)かどうかを判断します。

正常値要注意異常値
HbA1c(NGSP)5.5%未満5.5%未満5.5%未満
血糖値(FPG)99mg/dl 以下100~125mg/dl126mg/dl 以上
出典:公益社団法人日本人間ドック学会

高血糖の血液は血管にダメージを与えるため、特に細い血管の場合、血管のつまりが起きて細小血管症になることがあります。腎臓には糸球体というろ過装置があり、100万個ほど存在しますが、すべて細い血管で作られています。細小血管症が腎臓内で起こると、尿の中にタンパク質が漏れ出します。

よって、糖尿病性腎症や慢性腎臓病(CKD)を評価するためには、尿蛋白とHbA1c(NGSP)、血糖値の数値を確認します。

血糖値についてもっと詳しく
HbA1cについてもっと詳しく

腎症の法定健診以外の検査

法定健診(労働安全衛生法で義務付けられている健康診断)以外の腎症に関連する検査は下記の通りです。

  1. 微量アルブミン尿検査
  2. 血清クレアチニン値
  3. 血中尿素窒素(BUN)

それぞれの検査の詳細を解説します。

微量アルブミン尿検査

微量アルブミンとは、一般的な尿検査では検出されないような微量なタンパク質の一種です。腎臓にある糸球体の血管からタンパク質が漏れてしまう場合に、尿の中に微量アルブミンが確認できます。微量アルブミンは、すでに腎臓や糸球体に障害が起きている判断基準となります。

糖尿病や生活習慣病の人は精密検査で微量アルブミン尿検査を受けるように指導されることがあります。

血清クレアチニン値

クレアチニンとは、タンパク質が分解された時に作られる老廃物のことです。健康な人は、腎臓で不要物がろ過されて尿として排出されるため、クレアチニンも同様に尿から排出されています。しかし、腎症になっている人は腎臓の機能が低下しているために、血液中にクレアチニンが漏れ出していることがあります。

血液検査で血清クレアチニン値を測定し、腎臓の機能が低下しているかどうかを判断できます。血清クレアチニンの数値でGFR(糸球体ろ過量:Glomerular Filtration Rate)を測定します。

血中尿素窒素(BUN)

尿素窒素(BUN)とは、タンパク質が使われた時に出てくる老廃物のひとつで、クレアチニン同様尿として排出されるのが一般的です。しかし、腎臓の機能が低下している場合、血中尿素窒素(BUN)の量が過剰に増えてしまいます。腎症が進行するたびに、血中尿素窒素(BUN)の数値は高くなります。

血清クレアチニン同様、血液検査で測定し、腎臓の機能低下の状態を把握します。

腎症の法定健診以外の検査を受ける方法

腎症の法定健診以外の検査を受けるには、医療機関で医師の診察を受け、必要に応じた紹介や指示を受けることが一般的です。

または、特定の医療機関で人間ドックを申し込む方法もあります。検査内容によって費用が異なり、場合によっては高額になる可能性もあるため注意が必要です。

健康診断などにより腎症リスクが高いと判断された場合、定期的に精密検査を受けることで、腎臓の健康状態をより詳細に把握できます。気になる方は、かかりつけの医師に相談してみてもよいでしょう。

参考文献

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