2型糖尿病

【健康診断項目】高くても低くても心配な「血糖値(FPG)」

明木戸

血糖値(FPG)とは?

血糖値(FPG)とは、血液中のブドウ糖の濃度のことです。食事を摂ることで血液中のブドウ糖の濃度は高くなりますが、体を動かすためにエネルギーが使われるため、血糖値はある一定の数値に戻ります。

食後は血糖値(FPG)が上昇し、空腹時は血糖値(FPG)が低くなるのが一般的です。特定健診では、絶食10時間の空腹時血糖値(FPG)を測定し、ブドウ糖が使われて数値が下がった状態の血液で健康状態を確認します。

血糖値(FPG)が高くなるとすい臓からインスリンが分泌され、ブドウ糖は細胞へエネルギーとして取り込まれます。インスリンがうまく作用していないと、血糖値(FPG)が高くなるため、糖尿病や慢性すい炎などの疾患の早期発見につながります。

正常値と異常値

血糖値(FPG)の正常値と異常値について、下記の表でまとめました。

正常値要注意異常値
血糖値(FPG)99mg/dl 以下100~125mg/dl126mg/dl 以上

出典:公益社団法人日本人間ドック学会

絶食10時間の「空腹時血糖値(FPG)」の正常値と異常値です。健康に異常がない方は、空腹時血糖値(FPG)が70~100mg/dl以内に入っています。それ以上の数値が出てしまう場合は、高血糖の可能性があるので注意が必要です。

また、高血糖以外にも低血糖の方も注意が必要です。血糖値が低すぎる場合は、ホルモンバランスが乱れインスリンが過剰に分泌されている可能性があります。

一度の検査で糖尿病などの疾患だと診断されるわけではありませんが、異常値が出てしまった場合は早めに医療機関で精密検査を受けるようにしましょう。

異常値だとどうなる?

血糖値(FPG)が異常値になってしまったとき、体に与える影響を解説します。

血糖値(FPG)が高い場合

血糖値(FPG)が高い状態が続いてしまうと、血液中のブドウ糖が血管を破壊し始め、動脈硬化や脳卒中の原因になります。高血糖が続くと血管と神経系に大きな影響を与え、神経障害や網膜症、腎障害などのリスクも高まります。

また、高血糖ではインスリンがうまく機能していないことが多く、栄養の吸収もうまくいっていない状態です。全身の臓器が栄養不足で機能不全を起こしやすく、他の体の不調につながることもあります。

また、血糖値(FPG)が高い人は、以下の疾患の可能性があります。

  • 糖尿病
  • 慢性すい炎

どちらも早期発見と早期治療が望ましい疾患です。血糖値(FPG)が高い状態が続いている人は医療機関に相談しましょう。

血糖値(FPG)が低い場合

血糖値(FPG)が低い状態が続いていると、手の震え・めまい・動悸など体へ影響が現れます。それ以外にも、不安になったりイライラしたり、気づきにくい体の異変に悩まされてしまうことも。

血糖値(FPG)が70mg/dlよりも低い低血糖の人は、以下の疾患の可能性があります。

  • 甲状腺機能低下症
  • 甲状腺機能亢進症
  • 下垂体機能低下症

甲状腺はホルモンの分泌をコントロールしている器官です。甲状腺の疾患にかかっているとインスリンの分泌に影響を与え、低血糖になることがわかっています。それ以外にも、糖尿病の治療薬によって低血糖になってしまうことがあります。

低血糖の状態は体全体に栄養が行き渡らないことが考えられるため、血糖値が低すぎる場合も医療機関に相談しましょう。

異常値の原因は?

血糖値(FPG)で異常値になる場合、次のような原因があります。

過食・食生活の乱れ

過食の人は、血液中のブドウ糖を使い切る前に食べることを繰り返しています。そのため血液中のブドウ糖が非常に多くなってしまい、血糖値(FPG)の異常が出やすくなります。

また、食生活の乱れも血糖値(FPG)に影響を与えます。ご飯やパン、パスタなどの炭水化物中心の食事や、揚げ物が多い食事などは、血糖値の上昇が激しく、下がりにくくもなります。

肥満

肥満の人は、体に脂肪としてエネルギーを蓄えています。そのため、血液中のエネルギーが全身に行き渡りにくくなります。

過度なアルコール摂取

1日20~25g以上のアルコール摂取1をすると、肝臓に蓄積した脂肪に影響を与え高血糖になりやすいです。

運動不足

運動は、血液中のブドウ糖をエネルギーに変えます。デスクワークが基本の人や日常的に運動をしていない人は、血糖値(FPG)に異常が出やすいです。

ストレス

ストレスを感じると交感神経に影響を与えるため、ホルモンの分泌がスムーズに行われないことがあります。ストレスを感じている状態が続いているとインスリンなどのホルモンに影響を与えてしまい、血糖値(FPG)が上昇しやすいです。

加齢

筋肉の衰えにより、1日の消費エネルギーが下がります。しかし、若いころと同じ食生活を続けていると1日に消費するエネルギーよりも多くのブドウ糖が血液中に残ってしまうため、血糖値(FPG)の数値が高くなりやすいです。

また、ホルモンの分泌も加齢によって鈍くなるため、ブドウ糖を分解するインスリンが減ってしまうことも血糖値(FPG)の上昇につながります。

遺伝

血糖値(FPG)が上がりやすい体質は遺伝するため、家族や親戚に高血糖や糖尿病の人がいる場合は注意が必要です。

正常値でいるために

血糖値(FPG)を正常に戻すには、以下のようなことが推奨されています。

  • 適正カロリーの食事にする
  • 週に2~3回運動をする
  • アルコールは1日20~25g以下にする*1
  • 野菜、海藻、きのこなどを積極的に食べる
  • 脂っこい食事を減らす

正しい食生活、適度な運動を心がけることで血糖値(FPG)の数値は改善されていくでしょう。

参考文献

*1 厚生労働省「アルコールと糖尿病」

記事URLをコピーしました