認知症

9月は「認知症月間」——体質的リスクを知った今、できること

安嶋

日本では、認知症基本法により、毎年9月21日は「認知症の日」、9月は「認知症月間」と定められています。

また、国際的には9月21日を「世界アルツハイマーデー」、9月を「世界アルツハイマー月間」として、認知症への理解を深めるためのさまざまな取り組みが行われています。

認知症について考える機会が増えるこの時期、ご自身の遺伝子検査の結果を思い出し、不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

遺伝子検査で認知症の「体質的リスクが高い」という結果が出ると、「将来、認知症になることが決まっているのではないか」と心配になるのも無理はありません。

しかし、体質的リスクが高いことと、将来必ず認知症を発症することは同じではありません。

認知症の発症は、遺伝子だけで決まるわけではありません

認知症の発症には、加齢や体質的要因だけでなく、血圧や血糖、コレステロール、運動、喫煙、飲酒、人や社会とのつながりなど、さまざまな要因が複雑に関係しています。

遺伝子検査で示されるのは、生まれ持った体質的な傾向の一部です。現在の認知機能を診断するものでも、将来の発症を確定するものでもありません。

体質的な傾向そのものを変えることはできませんが、生活習慣や健康状態など、これからの行動によって変えられる要素もあります。

認知症に関連する「14の修正可能なリスク要因」

2024年に医学誌『The Lancet』で公表された報告では、認知症に関連する14の「修正可能なリスク要因」が示されています。

その14項目は、次のとおりです。

・教育機会の不足
・難聴
・高LDLコレステロール
・うつ病
・外傷性脳損傷
・運動不足
・糖尿病
・喫煙
・高血圧
・肥満
・過度の飲酒
・社会的孤立
・大気汚染
・未治療の視力低下

これらの要因に適切に対応することで、世界全体では、認知症の約45%を予防、または発症を遅らせられる可能性があると推計されています。

ただし、これは集団全体を対象とした推計です。14項目すべてを改善すれば、個人の発症リスクが45%下がるという意味ではありません。

また、教育機会や大気汚染のように、個人の努力だけでは変えることが難しい要因も含まれています。

それでも、血圧や血糖の管理、運動、禁煙、飲酒量の見直し、難聴や視力低下への対応など、今から取り組めることがあるという大切な示唆を与えてくれます。

今日から意識したい5つのこと

1.日常生活の中で体を動かす

ウォーキングやサイクリング、家事、スポーツなど、日常生活の中で体を動かす時間を増やしましょう。

まとまった運動時間を確保するのが難しい場合は、階段を使う、一駅分歩くといった小さな行動からでも構いません。

2.血圧・血糖・コレステロールを確認する

高血圧、糖尿病、高LDLコレステロールなどは、認知症との関連が指摘されています。

健康診断の結果をそのままにせず、気になる数値がある場合は医療機関に相談し、適切に管理することが大切です。

3.バランスのよい食事を心がける

野菜、果物、魚、豆類などを取り入れ、特定の食品に偏らない食生活を意識しましょう。

無理にすべてを変えるのではなく、「野菜のおかずを一品増やす」など、続けやすいことから始めるのがおすすめです。

4.人や社会とのつながりを保つ

家族や友人との会話、趣味の集まり、地域活動などへの参加は、心身への刺激になります。

一人で過ごすことが多い方は、短い会話や定期的な外出の機会をつくることから始めてみましょう。

5.聞こえや見え方の変化を放置しない

難聴や、治療されていない視力低下も、認知症に関連する要因として挙げられています。

「以前より聞き返すことが増えた」「眼鏡が合わなくなった」と感じたら、早めに医療機関へ相談しましょう。

体質

的リスクを「怖い情報」で終わらせないために

遺伝子検査の結果を知る意味は、将来を決めつけることではありません。

自分がどのような病気に注意したほうがよいのかを知り、健康診断を受ける、生活習慣を見直す、気になる変化があれば早めに相談するといった行動につなげることにあります。

すべてを一度に変える必要はありません。まずは、今の生活の中で無理なく続けられそうなことを一つ選んでみてください。

「認知症の日」や「認知症月間」を、ご自身とご家族のこれからの健康について考えるきっかけにしてみましょう。

※遺伝子検査の結果は、病気の診断や将来の発症を確定するものではありません。
物忘れなどの気になる症状がある場合や、検査結果について強い不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

<参考>
厚生労働省「認知症の日/認知症月間(世界アルツハイマーデー/世界アルツハイマー月間)」
厚生労働省「知っておきたい認知症の基本」
The Lancet Commission “Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report”

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