【健康診断項目】尿糖

尿糖とは?
尿糖とは、排尿の中に含まれているブドウ糖のことです。健康な人でも微量のブドウ糖が尿に含まれていますが、血糖値が高い人ほど尿に含まれるブドウ糖が多くなります。そのため、尿に含まれているブドウ糖の量によって、血糖値の高さがおおよそ把握できます。
血液は腎臓でろ過され、必要な栄養は再吸収を、不要なものはそのまま尿として排出されるというのが体の仕組みです。しかし、腎臓で再吸収できるブドウ糖の量は決まっています。血糖値が高いと再吸収されないブドウ糖が尿と一緒に体外に排出され、尿糖の量が増えてしまうのです。
尿糖試験紙はドラッグストアなどでも販売しているため、健康診断や検査を受けなくても簡単に健康観察できます。健康診断でも尿検査の一部として含まれていることがあり、糖尿病の検査としても使用されています。
正常値と異常値
尿糖の正常値と異常値は以下の通りです。
正常値 | 要注意 | 異常値 | |
尿糖 | (-) | (±) | (+) 尿糖(2+) 尿糖(3+) |
空腹時血糖 | 110mg/dl未満 | 110~126mg/dl未満 | 126mg/dl以上 |
食後2時間血糖 | 140mg/dl未満 | 140~199mg/dl未満 | 200mg/dl以上 |
尿糖(+)は血糖ヘモグロビン濃度HbA1c(NGSP)が6.5~6.9%の場合、尿糖(2+)は血糖ヘモグロビン濃度HbA1c(NGSP)が7%以上のときに検出される尿糖の値1です。
尿糖(+)以上は糖尿病の可能性が非常に高いため、早めに医療機関に相談しましょう。
異常値だとどうなる?
尿糖の異常値が出た場合は、血糖値が高い状態になっています。血糖値が高い状態は自覚症状がないため、緩やかに体にダメージが蓄積している状態です。高血糖は血管や神経に影響を与えるため、動脈硬化や脳卒中という命に関わる疾患や、神経障害や網膜症、腎障害などのリスクが高まります。
特に、尿を作っている腎臓は高血糖の血液をろ過し続けているとダメージを受けやすいので、腎臓の疾患のリスクも高まります。
通常、血液の中のブドウ糖は、すい臓で作られるインスリンというホルモンによって分解され細胞に吸収されます。そのため、食後に高くなった血糖値は空腹時間で一定の値まで下がるようになっているのですが、インスリンがうまく機能していなかったり、インスリンの分泌に問題がある人は血糖値が高くなりやすいです。また、尿糖が異常値の人は、すでに糖尿病や慢性すい炎になっているケースも考えられますので、異常値が出てしまった場合は早めに医療機関を受診するようにしましょう。
健康診断では空腹時血糖(FPG)を測定しますが、糖尿病の人でも空腹時血糖値(FPG)では異常値が出ない人がいます。しかし、尿糖検査により隠れ糖尿病を見つけることが可能です。
異常値の原因は?
尿糖が異常値になる原因には、以下のようなものがあります。
糖尿病
糖尿病とは、血糖値を下げるインスリンの不足や、インスリンの機能が低下してしまう疾患のことです。インスリンがうまく機能しないため、血液中のブドウ糖の分解ができずに高血糖の状態が続いてしまいます。
糖尿病の人は高血糖が続いているため、尿糖も異常値が出やすいです。
慢性すい炎
慢性すい炎とは、血糖値を下げるインスリンの分泌をつかさどるすい臓がうまく機能しなくなってしまう疾患のことです。慢性すい炎になると、インスリンの分泌がうまくいかないため血糖値が高くなり、尿糖の異常値につながります。
主な原因はアルコールで、男性の8割、女性の4割が飲酒による慢性すい炎になっています2。また、慢性すい炎になりやすい家系の人もいるため、遺伝的に慢性すい炎になる人も少なくありません。
過食や食生活の乱れ
過食や日常的な食生活の乱れによって、一時的に尿糖が異常値になることがあるので注意が必要です。1日に必要な摂取カロリー以上の食事を摂ったり、砂糖が含まれた飲み物を過剰に摂取することで血糖値が急激に上がります。
正常値でいるために
尿糖を正常値にするためには、血糖値の上昇を抑えることが大切で、食事療法と運動療法を取り入れることが有効と言われています。
食事療法は以下の通りです。
- 1日の摂取カロリーを越えないようにする
- 3食しっかり食べる
- バランスのよい食事を心がける
- よく噛んで食べる
- 食事は腹八分目
- 夜遅くや寝る前食事をとらない
また、体を動かすことで血液中のブドウ糖の消費するため、適度な運動をすることも血糖値を下げることにつながります。歩行での運動療法は一日1万歩程度が目安です3。