健康診断項目

【健康診断項目】動脈硬化リスクを総合的に評価「Non-HDLコレステロール」

おさむ佐藤

Non-HDLコレステロールとは?

Non-HDLコレステロールとは、「動脈硬化を引き起こすコレステロールの総量」を指します。コレステロールには、血管を守る働きを持つ「善玉コレステロール(HDLコレステロール)」と、血管にダメージを与えやすい「悪玉コレステロール(LDLコレステロール)」など、いくつかの種類があります。Non-HDLコレステロールは、この善玉コレステロールを除いたすべてのコレステロールを含んでいます。

特にNon-HDLコレステロールは、LDLコレステロールだけでなく、中性脂肪に多く含まれるリポ蛋白なども含むため、動脈硬化のリスクを総合的に評価できる点が特徴です。

近年では、Non-HDLコレステロールが心血管疾患のリスク予測に有用であるとして注目されています。中性脂肪の値が高い場合や、LDLコレステロールだけではリスクを十分に把握できない場合、この指標が特に役立ちます。

正常値と異常値

Non-HDLコレステロールの理想的な値は、 90〜140 mg/dL未満 とされています。1 この範囲内であれば、血管に余分なコレステロールが溜まりにくく、心臓や脳の病気のリスクを低く抑えることが期待されます。

以下に、Non-HDLコレステロールの基準値をまとめました。

分類値(mg/dL)
正常値150 未満
境界域150~169
高値(高non-HDLコレステロール血症)170 以上

参照元:厚生労働省e-ヘルスネット

Non-HDLコレステロールが高いと、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患のリスクが高まるため、基準値を超えた場合は注意が必要です。

特に糖尿病や肥満のある方は、基準値よりさらに厳しい管理が求められることがあります。

異常値だとどうなる?

Non-HDLコレステロールが高い状態が続くと、血管の壁にコレステロールが蓄積し、血液の流れが滞ります。この状態を「動脈硬化」と呼びます。

動脈硬化が進行すると、以下のような深刻な病気を引き起こす可能性があります。2

心筋梗塞(しんきんこうそく)

心臓に血液を送る血管が詰まることで、胸の激しい痛みや息切れが生じます。早期治療を行わないと命に関わる場合があります。

脳梗塞(のうこうそく)

脳の血管が詰まると、体の一部が動かなくなる、または言葉が出にくくなるといった症状が現れます。後遺症が残ることも多いため、予防が特に重要です。

これらの病気は、進行するまで自覚症状が乏しいのが特徴です。「健康診断の結果に異常があるけれど問題ないだろう」と放置すると、取り返しのつかない事態を招くことがあります。異常値が確認されたら早めに対策を始めましょう。

異常値の原因は?

Non-HDLコレステロール(悪玉コレステロールの総量を示す指標)が異常値になる背景には、LDLコレステロールや中性脂肪と同様に、生活習慣や食事の内容が密接に関係しています。3

不適切な体重管理
体脂肪が過剰に蓄積されると、Non-HDLコレステロールの値が上昇する傾向があります。特に内臓脂肪が多い場合、脂質代謝が乱れ、悪玉コレステロールの増加につながります。適正体重の維持が重要で、BMI(肥満度指数)を基準とした適正体重を目指し、エネルギー摂取を見直しましょう。

飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の過剰摂取
Non-HDLコレステロールにはLDLコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)が含まれるため、これらを増やす食品の摂取が直接的な原因になります。飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を多く含む食品(揚げ物、加工食品)を控え、不飽和脂肪酸(青魚、ナッツ類、オリーブオイルなど)を積極的に摂取することが効果的です。

アルコール摂取
アルコールは肝臓での脂肪合成を促進し、中性脂肪の増加を通じてNon-HDLコレステロールの値を悪化させる要因となります。過剰な飲酒を避け、節酒や禁酒を心がけることで改善が期待できます。

運動不足
運動不足は、脂質代謝を低下させ、LDLコレステロールや中性脂肪の増加を引き起こします。有酸素運動を日常生活に取り入れることで、Non-HDLコレステロールを効果的に減少させることができます。

正常値でいるために

Non-HDLコレステロールを正常値に保つことは、心血管疾患のリスクを低減するために非常に重要です。以下では、日常生活で実践できる効果的な方法をご紹介します。

食事を見直すポイント4

飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を控えn-3系多価不飽和脂肪酸を積極的に摂取する
青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に含まれるEPAやDHAは、中性脂肪を減らし、LDLコレステロールを抑える効果が期待できます。また、揚げ物や菓子パン、スナック菓子には飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が多く含まれており、Non-HDLコレステロールの増加につながります。これらを避け、不飽和脂肪酸を含むオリーブオイルやナッツ類を代わりに選びましょう。

アルコールを適量に抑える
アルコールは肝臓で脂肪合成を促進するため、Non-HDLコレステロールの増加につながります。1日1杯(約25gのアルコール)までに制限することを心がけましょう。

適度な運動を取り入れる

有酸素運動を習慣化する
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を1日30分程度行うことで、脂肪燃焼が促進され、Non-HDLコレステロールの低下が期待できます。無理のない範囲で継続することが重要です。5

日常生活の中で運動量を増やす工夫をする
忙しい日々の中でも、運動量を増やす工夫は可能です。例えば、エスカレーターではなく階段を使ったり、駅を一つ手前で降りて歩くといった手軽な方法を取り入れるだけでも効果があります。6

適正体重を維持する

適正体重を維持することは、Non-HDLコレステロールの正常化に直結します。BMI(体格指数)を参考に、自身の適正体重を確認し、体脂肪を減らす取り組みを行いましょう。食事管理と運動を組み合わせることで、効果的に体重をコントロールできます。7

Non-HDLコレステロールを正常値に保つためには、食生活や運動習慣の見直し、適正体重の維持が不可欠です。これらを日常的に心がけることで、動脈硬化や心血管疾患のリスクを大幅に低減することができます。無理のない範囲でできることから始め、健康的な生活を目指しましょう。

参考文献

  1. *1 日本人間ドック学会「検査表の見方」 ↩︎
  2. *2 Non-HDLコレステロールと循環器疾患発症との関連について ↩︎
  3. *3 厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症(基本)」 ↩︎
  4. *4 厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症(実践・応用)」 ↩︎
  5. *5 厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症を改善するための運動」 ↩︎
  6. *6 スマート・ライフ・プロジェクト について ↩︎
  7. *7 厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症(実践・応用)」 ↩︎

日本人間ドック学会「血液検査」
厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症」
厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症を改善するための運動」
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」

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