【健康診断項目】動脈硬化リスクを測る「LDLコレステロール」

LDLコレステロールとは?
LDLコレステロールは、全身の細胞にコレステロールを届ける重要な役割を果たしています。しかし、この値が高すぎると、血管の壁にコレステロールがたまり、血液の流れを妨げる「動脈硬化」を引き起こす原因になります。動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる病気のリスクが高まるため注意が必要です。1
健康診断では、将来の動脈硬化リスクを予測し、心血管疾患を予防するためにLDLコレステロール値を測定します。この値が高い場合は、生活習慣を見直すことが求められます。
正常値と異常値
LDLコレステロール値の理想的な範囲は、60~119mg/dLとされています。2 これを超えると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。
LDLコレステロールの正常値と異常値は以下のとおりです。
分類 | 値(mg/dL) |
---|---|
正常値 | 120 未満 |
境界域 | 120~139 |
高値(高LDLコレステロール血症) | 140 以上 |
参照元:厚生労働省e-ヘルスネット
120 mg/dL未満であれば問題ありませんが、もし境界域や高値と診断された場合は、生活習慣の見直す必要があります。
異常値だとどうなる?
LDLコレステロールが高い状態が続くと、以下のような深刻な健康リスクが高まります。
動脈硬化の進行
LDLコレステロールが血管の壁に蓄積すると、血管が硬くなり、狭くなる「動脈硬化」が進行します。この状態が悪化すると、心臓や脳に血液が十分に届かなくなり、以下の病気を引き起こす可能性があります。
心筋梗塞
心臓に血液を供給する血管が詰まり「激しい胸の痛み」や「息切れ」を伴うため、放置すると生命の危険があります
脳梗塞
脳の血管が詰まり「体の一部が動かなくなる」や「言葉が話せなくなる」などの症状が現れるだけでなく、後遺症が残るケースも多いため予防が重要です
「少し数値が高いくらいなら大丈夫」と思って放置すると、これらのリスクがさらに高まる可能性があるため注意してください。
異常値の原因は?
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高くなる原因の多くは、生活習慣に関連しています。特に食生活や体重の管理は大きな影響を与えるため注意しましょう。
不適切な体重管理
過剰な体脂肪の蓄積は、LDLコレステロールの値を上昇させる一因です。特に内臓脂肪が増えると、脂質代謝に悪影響を及ぼし、動脈硬化のリスクが高まります。適正体重を維持することが大切で、目安として「身長(m)×身長(m)×BMI(18.5~24.9)」を参考にエネルギー摂取量を調整しましょう。
食事内容の偏り
LDLコレステロールの値が高くなる主な要因の一つは、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取です。これらは揚げ物や菓子パン、加工食品に多く含まれています。
これらの要因を把握し、生活習慣を改善することがLDLコレステロールを正常値に保つための重要な第一歩です。3
正常値でいるために
食事や運動など、少しの工夫でLDLコレステロールを正常値に保つことが可能です。以下の方法を参考にしてみてください。
食事を見直すポイント4
飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の摂取を制限する
揚げ物、菓子パン、加工食品などには、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が多く含まれており、LDLコレステロールの値を上昇させる原因になります。これらの食品を控え、調理にはオリーブオイルやキャノーラ油などの不飽和脂肪酸を含む油を使用するようにしましょう。
コレステロールを含む食品を適度に摂取する
コレステロールを多く含む食品(卵黄、内臓肉など)を摂りすぎると、LDLコレステロールの値を高めることがあります。適量を心がける一方、コレステロール値への影響が少ない青魚や大豆製品を積極的に取り入れましょう。
n-3系多価不飽和脂肪酸を積極的に摂取する
青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に豊富に含まれるEPAやDHAは、LDLコレステロールの値を下げる効果が期待できます。これらを摂取することで、脂質バランスの改善が期待できます。
食物繊維を意識して摂取する
野菜、果物、全粒穀物、海藻、きのこなどに含まれる食物繊維は、コレステロールの腸内吸収を抑え、体外への排泄を促進します。毎食にサラダやスープを取り入れることで、手軽に摂取量を増やすことができます。
アルコールの摂取量を制限する
過剰なアルコール摂取は、肝臓の負担を増やし、脂質代謝を悪化させることがあります。1日1杯(約25gのアルコール)までを目安に、適量を守るよう心がけましょう。
簡単な運動を続ける
運動は、LDL値を下げるために非常に効果的です。特に1日30分程度のウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を習慣にできると良いでしょう。5
ストレスをためない
ストレスはホルモンバランスを乱し、LDL値を悪化させる可能性があります。6
趣味など自分が楽しめる活動を意識的に取り入れると、リフレッシュできるためおすすめです。ストレス解消は、LDLコレステロールの改善だけでなく、心身全体の健康維持に役立ちます。
参考文献
- *1 厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症」 ↩︎
- *2 日本人間ドック学会「検査表の見方」 ↩︎
- *3 厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症(基本)」 ↩︎
- *4 厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症(実践・応用)」 ↩︎
- *5 厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症を改善するための運動」 ↩︎
- *6 健診結果とストレスチェック結果等の関連性に関する研究 ↩︎
・日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」
・厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症」
・厚生労働省e-ヘルスネット「脂質異常症(実践・応用)」